ごめんね
「ナールト。遊んで」
そう言いながら窓から進入してきた上司をナルトは思い切り嫌そうな目で見返した。
「あ、何よ。その目」
任務が休みで巻物でも読んで印の練習をしようかとした矢先の出来事である。
ナルトがカカシの言う「その目」をしたのには訳がある。カカシは前科持ちなのだ。
この間もひょっこり訪ねてきて目隠しをして物を当てるゲームと称してキスをされた。
しかも理由がナルトなら相手をしてくれそうだからという。そんな理由でセカンドキスを奪っていったのだ。
「絶・対・や・だ」
つかつかと窓によるとぴしりと閉めて鍵をかけてしまう。
カカシはポシェットからガラス切りを取り出すと鍵の部分を手際よく切り取った。
「なにすんだってばよ!!」
窓ガラスをはめるのにどのくらいかかるかわかってるのかこの上司は! とばかりに怒鳴りつければ、鍵を開けて入ってきたカカシは拗ねたようにナルトを見る。
「えー。だってナルト鍵閉めるんだもん」
「えーだってじゃねえってばよ! 下忍の給料でどのくらいやりくりしてんだとおもってんだってば! 言っとくけどな、この窓入れるのに三回任務しなくちゃならねえんだってばよ!」
「だから鍵閉めるナルトが悪いんでしょ」
ぶーっと頬を膨らませて抗議するカカシにナルトの血管がぶち切れそうになった。いや、切れてしまったのかもしれない。
広げていた巻物を丸め、リュックサックを引っ張り出し下着や着替えを適当に入れる。
「ナルト、怒ってるの?」
カカシの問いに返事もしないで、いや、カカシを無視してナルトはリュックに必要最低限の物を詰めていた。
「ごめんってば」
無視。
カップラーメンをスーパーのビニールに入れる。冷蔵庫をあけて残っていた牛乳を一気飲みするとパックをつぶしてゴミ箱に。
「ナールートー」
「わ!」
サンダルを履いてドアノブに手をかけた瞬間ぐいっと抱き上げられた。
「ごめんね?」
振り返るナルトの顔を覗きこむようにしてカカシが謝る。
「先生って、常識ないってばよ!」
「だからナルトが鍵閉めるからでしょ」
「だからってガラス切りで……」
言ってる途中に段々やるせなくなってぼろぼろと泣いてしまう。猫の仔の様にだらんとしてカカシに抱かれている。
「こないだだってそうだってばよ。勝手に入ってきてキス勝手にしていくし。今度は窓壊すし。最悪だってばよ」
一旦とんっとナルトを降ろすと口布をずらし、向かい合わせに抱き上げる。
「……」
ちゅ。
いきなりされたカカシのキスに呆然としたが、ばたばたと暴れだす。
「先生、ちっとも判ってねえってば!」
「だって、可愛かったから」
「先生の馬鹿! 先生の馬鹿!」
わんわんとナルトは泣く。
「ごめんね」
抱き上げたままカカシはニコニコと泣き喚くナルトを見ていた。
おわり
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