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● めかくし  ●

「ナルト、エッチな事しようか?」
 ナルトはお菓子を食べる手を止めてカカシを見つめた。大人の男の人にそんな事を言われてのは初めてだ。まあ十二歳の子供にそんな事を言う大人も少ないと思うが。
「え?」
 何を言われたのか判らなくてそのまま問い返してみる。
「だからエッチな事」
 昼間にいきなり訪ねてきてとんでもない事を言い出すもんだと目を見張る。
 本日は任務休み修行もいいがたまにはちゃんと休めとツナデに釘をさされ、それではと溜まり溜まった家事を片付け、一息入れていた所に上司が窓から「やあ」と訪ねて来たのだ。
 しかもとんでもない事をほざく上司を菓子を食べるのも忘れて呆然と見ている。
「あの……?」
「ん?」
「それって拒否権あるってば?」
「お前、良く拒否権なんて難しい言葉知ってたね」
 感心してカカシはナルトの頭をなでる。まるで小さな子を褒めるような態度にナルトはむっとした。
「一体なんだってばよ」
「だからエッチな事しようってば」
「何で先生としなくちゃなんねえんだよ」
「ナルトが一番やってくれそうだから」
「俺ってばそんな、俺ってばそんな!」
 言ってる間に怒りが沸いて来てナルトは何かカカシに決定打になるような言葉を投げようといいながら言葉を捜すが上手い言葉が見つからない。
 それでは誰でもいい事ではないか。ナルトじゃなくてもいいんだよとこの上司は言ってるのだ。他にやる人がいないからしょうがなくナルトにするんだと。
 大体なんで自分の初めてを上司にささげなければいけないのか。
「わ!」
 言ってる間にテーブルに置いてあったナルトの額宛でめかくしをされてしまう。
「わ、わ」
 慌てて目隠しを外そうとしてあげた手をカカシに掴まれてしまう。
「ねえ、ナルト。これからさ色々な味当ててみてよ」
「味?!」
「そ、色々口に運んであげるからさ。あたったら食べていいよ」
 予想外の言葉にナルトはぽかんとしたと同時にほっとした。てっきり肉体的に何かされるかと思っていたからだ。
「え、ま、そんならいいってばよ」
「えろいよね。目隠しして口に運ぶって」
「ひょっとしてそれがエッチな事だってば?」
「あれ? あれ? あれ? 期待しちゃった?」
 といいながらちゅっと音をたてて何かが口に当たる。カカシの唇が触れたのだが、目隠しされたナルトには何だか判らない。生暖かいような冷たいような湿った感じと柔らかさにナルトは首をかしげた。
「もうはじまってるんだってば?」
 そう言ってぺろりとカカシの唇を舐める。
「味、しないてばよ?」
 カカシは唇を押さえて真っ赤になって何かに耐えていた。
「うーん。おいしかった。ご馳走様」
「え? え?」
 カカシだけがご馳走様だがナルトは何をされたのかわからない。
「じゃあ、一個目ね」
 持って来たフルーツの中から苺を取り出すと唇に押し当てる。
「冷たいってば」
「舐めてもいいよ」
「ん」
 舌をのばしてそっと苺を舐める。カカシは震えてナルトの仕草を見ていた。
 そう、このゲーム見ているほうだけがエロイと思うだけのゲームなのだ。
「あ、この匂い。苺だってば!」
「あたり。はいどうぞ」
 柔らかい果肉に歯を立てると苺の香りが広がった。ナルトの口の端から果汁がこぼれるのをカカシが親指で拭って口に含む。
「エロイねー」
「?! 何がだってば?!」
 判らないのは目隠しをされた本人だけである。
 何か変な事をされてるのだろうかと焦って目隠しを取ろうとするが、またもやカカシに邪魔されてしまう。
「はいはい。まだ終わってないよ」
「だ、だって!」
「はいはい次ね」
 と今度は人参を口に押し付ける。ナルトは苺で匂いに気がついて人参も匂いで当てようとしたが、皮付きなので匂いは強くない。
「かじってもいいよ」
 カカシのその言葉にナルトは野菜だという事に気がついて頭を引いた。
「野菜だろ」
「教えない。当ててみたら」
 舌で舐めてみるが固い感触がする。少し歯をたてると人参独特の味と匂いが広がってナルトはうぇと舌を出して仕切りと味を吐き出すようにしている。
「まじいってば!」
「駄目だよー野菜も食べないと」
「ノーサンキュー!」
 カカシの声が聞こえる方に大きく腕でばってんを出す。
「しょうがないなあ。じゃあ、口直しね。口あけて」
 素直に口を開けるナルトに思わず正直なものを口に入れたかったカカシだがぐっと我慢すると蜂蜜の蓋を開けた。
 手甲を取ると指で掬いナルトの口元に持っていく。
 口に入れようとして思いとどまり、カカシはナルトの唇に蜂蜜を塗った。
「わ! 何?!」
 ぬるりと塗られた蜂蜜をナルトは舌で舐める。甘い味が舌の上にのった。
「甘い」
「なーんだ」
 生憎とナルトは蜂蜜を舐めた事は無かった。あってもこれが蜂蜜だとは思わないだろう。味だけではかなり難しい。
 もう一掬いするとナルトの口の中に指を入れる。
 ナルトの柔らかい舌がカカシの指を舐める度にカカシはゾクゾクと背筋を振るわせた。
「固いってば? でも甘いってばよ?」
 かじろうとして歯をたてる。
「いっつ!」
「え?! 動いた? 何? あ、先生の指?」
「もうちょっと舐める?」
「え? う、うん」
 指を引き抜くともう一度蜂蜜を救い今度は自分の口に含むとゆっくりと口付ける。
「ん?!」
 口全体をふさがれたがナルトはそれが何なのかさっぱりわからず確かめようとカカシの唇に舌を這わす。
「んん?」
 舐めてもさっぱり判らない。カカシの指だと思ったのだが、指では柔らかすぎる感触にナルトの疑問は増すばかりだ。
 一番最初に舐めた感触に似ているなともう一舐めする。
「ずいぶん、大胆だよね」
 予想外に近い声にナルトが飛び上がる。
「え?!」
 その瞬間ナルトの歯がカカシの唇に当たった。
「いっ!」
「え? え? 何だってば?」
 カカシが唇を押さええていた為にナルトが目隠しに伸ばす手を止められない。
 ずるりと目隠しをずらして見えたものはカカシの鼻筋と眼だった。
「?!」
 一瞬何が何だかわからなかったが、カカシの顔だとわかると慌てふためく。
「え?!」
 ナルトは自分が舐めていたものが判って一気に顔を真っ赤にさせる。
「せ、せせせ?!」
「ごちそうさま」
「ご、ごちそうさまじゃねえってば!」
「何? もっとしたいの?」
 ナルトは絶句した。
「エッチなゲームでしょ?」
 ずれた目隠しを戻しながらカカシは固まってるナルトの唇にちょんと唇を落とした。

おわり
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