寝転びながらナルトは、新聞をめくり社会面で手を止めて熱心に見入っているカカシを見ていた。
「センセー」
「んー?」
暇で暇で堪らなくて声をかけると返事だけはしてくれる。返事だけで見てはくれない。
「センセーってば」
「なーにー?」
「もー!」
拗ねてごろりと背中を見せる。
最近こういうことが多い。最初からだったような気もするが。その度に自分ばかりカカシを好きで、負けたような気がしてならない。
大人は何を考えているか判らない上に余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)でずるい。
「何よ。ナルト」
「……」
お返しとばかりにナルトはカカシを無視して切ったばかりの爪を見つめる。深爪スレスレで綺麗に切りそろえてある爪は昨晩カカシが切ってくれたものだ。
「用があるんじゃないの?」
「どーせ、俺なんか用事以下だってばよ」
口の中でぶつぶつ呟いてフローリングの床にうつぶせになる。
がさり。
新聞をめくる音が聞こえて、ナルトはますますやりきれなくなった。
浮気してやるってば!
と言ってもカカシ公認で浮気は認められているのでこたえるかどうか甚だ疑問である。それがますます不安でイライラする。
俺はお前一本にするけど、お前は俺一本にしちゃだめだからね。
告白した時に言われた。何で? と聞いたら笑ってこたえてくれなかった。
この間も聞いてみたのだが、その時はあと二年と答えた。
俺の愛情って重いのかな。
思えばナルトだけが好きだのキスしてだの言ってる気がする。気がつくと切なくて涙が滲んだ。
がさがさと新聞の音がする。ナルトの疑問もその音と共に深まっていく。
ひょっとして、迷惑だったとか。
ずーんと心が沈んだ。マイナス思考がぐるぐる頭の中をまわる。
「ナールト」
頭に何かかぶせられたので不貞腐れて背中を見せたまま、手だけで確かめる。
とがった天辺が指先に触って、何だこれはと起き上がりながら物を確かめると新聞カブトだった。
問いかけるようにカカシの方に顔を向けると、
パン!
パン!
途端、目の前で乾いた音が二つ鳴る。
突然の事に声が出ず手にした新聞カブトを落としてしまう。
ニヤニヤといたずらっ子の様に笑んでいるカカシの手には、袋状に折られた新聞紙が握られている。子供が良く相手を脅かすために折るもので、折り方は単純だが勢いをつけて振り下ろすと袋状の部分が開いて大きな音がするのだ。
「大成功だね」
頭には新聞カブトまでかぶってる。
ムッとしたナルトは広げてあった新聞紙を手早く棒状に丸めると、カカシの新聞カブトをなぎ払った。
新聞紙だからとよけもしないので、頭から新聞カブトが落ちる。
「お、やるねえ」
そのままむかついていたので、ぽこぽこと頭を殴っていると手を掴まれて引かれ、バランスを崩し床に手を着いて身体を支えた。怒りをぶちまけようとあげた顔の前にはカカシの顔が見えた。
「悪い子にはちゅーしちゃうよ」
「してってば」
泣きそうな目で訴え、ナルトは目を閉じて唇を突き出す。
まっていると自分が望んではない、頬の方に唇の感触がしたので怒りながら目を開きカカシを睨みつける。
「何で口じゃないんだってば!」
「良い子にしか唇にちゅーはしません」
カカシは飛ばされた自分の新聞カブトを身体をひねって取るとナルトにかぶせるので、イラついてカブトを跳ね除け、怒りをカカシにぶつける。
「先生やっぱりずりいってば!」
「大人だからね」
ひょうひょうとナルトの怒りを受け取ってくれないカカシに怒りを通り越して泣きたくなる。自分はこんなに思ってるのにカカシはちっとも判ってくれない。
「この間と一緒だってばよ!」
してくれないなら自分からしてやる! とカカシの頬に手を伸ばすと掴まれた。そのまま掌にキスされて頬擦りされる。
どうって事ない仕草なのにドキドキして真っ赤になってナルトは目を逸らす。
「先生、ずりいってば」
手の平にカカシの頬を感じてナルトは手を引き抜いた。
どうがんばってもこのずるい大人には勝てないのだ。
おわり
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二万ヒットお礼小説です。
何時もありがとうございます。
はさみの続きです。