「ねぇ・・・どこ行くの?」
「うわっ!びっくりしたっ!!」
お日様が丁度真上に昇った頃、ナルトは愛用のガマちゃん財布を手に、イソイソと身支度を整えていた。
今日は珍しくカカシ班と紅班に任務が入っておらず、両班の子供達は任務が休みとなっていた。
久しぶりにゆっくり体を休め、ナルトが目覚めたのはつい先刻。腹時計も正確に昼である事を主に告げた。
「そろそろ約束の時間だってばよ!」
そう言ってベットから起き上がり出かける準備をしている時の事だった。
「なーんか楽しそうだねぇ〜?」
窓枠に腰掛けてニコニコ微笑む上忍に、ナルトは指を突きつけて叫んだ。
「カカシ先生ってば! あんだけ窓から入ってくんなっつったのに、何で窓から入ってくんだってばよ! びっくりするじゃん! 何度言えば分かんだよ!」
「んー? そうだねぇ・・・何度言ったら分かるのかなぁ?」
まるで人事のように腕を組んで小首をかしげて考えるフリをする上忍に、ナルトは大きく肩を落とした。
「ねぇ、そんな事はどうでもいいんだけどサ。嬉しそうに財布握って、どこ行くのよ?」
「あぁ? 遊びに行くんだってばよ」
「へぇ、どこに?」
「まだ分かんねぇ」
ナルトの言葉に、カカシはそのまま横に倒れるんじゃないかと思うくらい首を傾けた。
「分からないのに財布持って出かけるの?って言うかさ、自分の事なのに分からないの?」
「だからぁ〜! 今日はキバと遊ぶ約束してんだってばよ! 一楽行って、駄菓子屋行ってそれからどーするか、まだ分かんねーって事!」
吐き捨てるとナルトはジャケットを手に取り、窓枠に腰掛けたままのカカシを振り返った。
「なっ・・・何だってばよ? その顔・・・」
振り返った先にあるカカシの顔には、眉間に深い皺が刻まれていた。
「キバ? キバくんて・・犬の子だったよねぇ?」
「犬の子じゃねぇ。犬を連れた子だってばよ!」
「ああ、そうそう、それ。なに? お前キバくんと仲良かったっけ?」
「キバとはアカデミーの頃から良く遊んでたってばよ」
「へぇ・・そうなんだ? 仲良いんだ? ふーん・・」
「つーかさ、カカシ先生こそ何しに来たんだってばよ?」
「良し! 決めた。あのさ、ナルト。オレも行く」
「はぁ?! カカシ先生、それ俺の質問の答えになってねぇってばよ! 人の話聞いてんの?」
「聞いてるよ? 一楽行って、駄菓子屋サン行くんでしょ? オレも一緒に遊んでよ」
「あそっ?! 遊んでって・・・カカシ先生、歳いくつだよ?」
「ん?まだまだイケてる26才」
「オヤジじゃん・・・・」
「うわ・・ひどっ・・」
がくんと頭を垂れて膝を抱えるカカシに、ナルトは容赦なく冷水を浴びせる。
「大体さ、26歳の大人が駄菓子屋さんに何の用事があるんだってばよ? 一緒にメンコやったりベーゴマ回したりすんのかよ?」
「うん・・・一緒にする」
「うぇ・・・マジで?」
言いながらナルトの頭の中で、カカシがメンコを始め、ベーゴマを回し始めた。
やなモノを想像してしまったと、ナルトは頭をふるふると振り、ジャケットを羽織った。
「・・・カカシ先生・・やっぱやめとけってば。それってすっげぇ痛い大人じゃん! 子供の遊びに大人が入ってきたらおかしいってばよ」
「ふ〜ん・・・メンコやったりベーゴマ回したりするの、大人はダメなんだ?」
背中を丸め、膝を抱えて窓枠に器用に乗ったまま、カカシは足元の窓枠に溜まった埃で小さな「の」の字をいくつも書いた。
「とにかくさ、俺ってばもう行かねーと・・・キバきっともう待ってるし」
「どこで?」
ようやく少し顔を上げ、上目使いにナルトを見つめるカカシにナルトは「演習場!」と答えて玄関の鍵を手にした。
「そう言う事だからさ、んじゃな! カカシ先生、窓閉めて帰れってばよ!」
ナルトはカカシをその場に残し、玄関に鍵をかけて演習場へ向かって駆け出した。
一人ナルトの部屋に残されたカカシは
「演習場・・ね? 了解」
そう言ってニヤリと口の端を吊り上げた。
「ナルト! おせーぞ!」
「ごめんってば! 出ようとしてたらカカシ先生が来ちゃってさ」
「何だよ? 任務でもあんのか?」
「違うってばよ。何でか知んねーけど、カカシ先生任務休みの日は決まってうちに来るんだってばよ。しかも絶対玄関から入ってこねーの! いきなり窓から声かけてくるから、びっくりすんだってばよ・・・」
「へぇ・・・つかみどころのねぇ変な先生だと思ってたけど。お前んとこの先生って、やっぱ変なんだな」
「うん、変って言えば変だってばよ!・・・・あれ? キバ、赤丸は? 一緒じゃねーの?」
「ああ、今日はちょっと体調悪くてな。連れまわすのも可哀相なんで、ねーちゃんに預けてきた」
「そっか・・・んじゃさ、キバ! 早く一楽行こうってばよ。俺、腹へっちゃって・・・ん?」
キバに向かって空腹を訴えていると、目の前のキバの視線が自分を通り越し、後方に向けられている事にナルトは気付いて言葉を切った。
「どうした? キバ・・・」
「いや・・なぁナルト。お前の連れか?」
「へ?」
何を言っているのだろうとナルトがキバをじっと見つめると、キバは「ほら・・後ろ」とナルトの後ろを指差した。
「連れ? 連れなんていねぇってばよ?」
ナルトはクルリと振り返った。
「お兄ちゃん、遊んで」
「は?!」
ナルトの後ろには5〜6歳の少年がニコニコ微笑んで立っていた。
「お前・・誰だってばよ?」
ナルトは少年の前で腰を落としマジマジと顔を眺めた。
「・・・・どっかで見た事ある顔だってば・・・」
うーんとナルトが唸って考えていると、キバも少年の前でしゃがみこんだ。
「おい、ナルト・・・こいつお前んとこの先生に似てないか?」
「え? あ・・そうだってば! だからどっかで見た事あると思ったんだってばよ!」
言われてみれば、確かにそうだ。
銀色の髪の毛に眠そうな目。
違う所と言えば、左の瞳の色と瞼から頬にかけて走る傷が無い事くらい。
「カカシ先生にそっくりだってばよ・・・」
ナルトの言葉にキバはケタケタと笑い出す。
「お前んとこの先生の隠し子だったりしてな!・・・イッテェ!! 何すんだよ! このガキッ!」
少年はキバの足を思い切り踏みつけていた。
「ああ・・キバ! んなに怒るなってば・・・」
ナルトがキバを窘めていると
「カカシなんて知らない」
少年はボソリと呟いた。
「嘘つくな! ナルト、コイツ絶対アイツの血引いてるぞ?! 一見地味なのに、実は派手なこの髪の毛の色に、センスの悪い髪形! ガキのくせに目つきの悪いとこなんてそっくりだぜ?・・・・イテッ! テメーッ! やる気かよ!」
少年を指差しナルトに訴えてたキバの指に、少年は今度はがぶりと噛み付いていた。
「お前、嫌い」
「俺だってお前みたいな生意気なガキ嫌いだよ!」
「ちょ・・キバ〜・・・」
互いに視線を合わせ、バチバチと火花を散らす二人の間に、ナルトは割って入った。
「お兄ちゃん好き」
少年はナルトの首に手をまわし、ぎゅっと抱きついてくる。
「こら! ガキッ! ナルトに触んな!」
「だからキバ・・・相手は小さい子供だってば・・・怒るなって」
キバに顔を向け、眉を顰めて注意するナルトの陰から少年は顔を出し、キバに向かって舌を出す。
「・・!!! ンのガキーーーッ!」
苛立って拳を震わせるキバをよそに、ナルトはニコニコ微笑んで少年を抱きかかえ、ゆっくりと立ち上がった。
「ちょっと遊んでやれば気が済んで帰るってばよ。一緒に駄菓子屋連れてってやるってば」
「何だよ? 一楽はいいのかよ?」
「駄菓子で腹もたせるってばよ!」
そう言って先に立って歩き出したナルトの後ろを、キバは渋々ついて歩き始めた。
ナルトの肩越しに少年は顔を出し、後ろを歩くキバに向かって今度は思い切りアッカンベーをして見せた。
「かわいくねぇ・・・」
「まぁ、そう言うなってばよ。キバが怒るからこの子怖くて意地張って見せてんだってば」
「フン・・俺には怖がってるようには見えねーけどな」
駄菓子屋でとりあえずお菓子を買い与え、店先でナルトとキバがメンコをして遊んでいると、少年が自分もやりたいと入ってきたのだ。
ナルトが自分のメンコを半分少年に渡すと、少年は「お前とやる」そう言ってキバを指差した。
「てめぇのメンコ全部取ってやるからな!」
キバがそう叫んでから数分後。
キバのメンコは全て少年の手の中にあった。
ベーゴマをすれば少年のコマにキバのコマは弾かれ、割れてしまい、使い物にならなくなった。
そこで「かわいくねぇ・・・」と、キバが負け惜しみ半分で呟いたのだ。
どれくらい駄菓子屋で遊んだだろう。
もう夕日が傾き、西の空が赤く染まり始めた。
縁台にナルトが腰を下ろし、キバもそれについてナルトの隣に腰掛ける。
「そこ、どけ!」
「なんだと?!」
ナルトの隣に腰掛けたキバを、少年は必死で押し退けようとする。
「あのな、あっち側空いてるだろ?! あっちに座れ! 俺をわざわざ押し退ける必要がどこにあるんだよ」
キバが少年を睨むと、少年もキッと睨み返し「どけ!」と、再び同じセリフを口にした。
「ほら見ろナルト! こいつのどこが俺を怖がってるんだよ!?」
「わ・・分かったってば。俺がずれてやるってばよ・・・」
苦笑しながらナルトはキバと反対の方向へ座っていた位置をずらし、少年が座れるだけのスペースを作ってやった。
少年は満足げにナルトとキバの間に腰を据えた。
「おい・・お前ナルトにベタベタしすぎだ! 離れろよ!」
「うるさい」
少年はナルトの腕に自分の腕を絡め、べったりとナルトの体に自分の体を預けている。
「いいじゃん、こいつ可愛いってばよ」
ナルトは微笑みながら少年の頭を、いつも自分がカカシにしてもらうようにクシャクシャと撫でてやった。
少年はナルトの顔を見上げ、気持ち良さそうに目を細めた。
『ホント、見れば見る程カカシ先生に似てるってば。それになんかすげー可愛い・・・』
ナルトがじっと少年の顔を見つめていると、少年はナルトの腕をグイと引き、傾いたナルトの顔にチュッと口付けた。
「うわ! お前何やってんだ! ナルトに・・ナルトにっ! 俺でさえ何もしてねーのに!」
「・・・キバ? 俺でさえ・・・って、何だってばよ・・・」
「あ? あ、いや・・・その・・・」
キバの叫びにナルトがジトリと目を細める。
少年は再びナルトの腕に自分の腕を絡め、体をべったりと預けてきた。
ナルトは何故か、胸がドキドキと高鳴るのを感じて空を見上げた。
その時だった。
「あんた達、ニッキ水飲むかい?」
「え?」
振り向くと駄菓子屋のおばあちゃんがニッキ水を三本手にし、店から出てきた。
「あ、ばぁちゃん! お金払うってばよ!」
ナルトがガマちゃん財布を取り出すと、おばあちゃんは首を横に振った。
「あんた達、今日は子守だろ? これはそのご褒美だよ。それに休みの日にはいつも遊びに来てくれるからね。今日は特別サービスだよ」
そう言って赤、黄、緑のニッキ水をナルト達三人の手にそれぞれ配った。
「ありがとうだってばよ!! ばぁちゃん!」
ナルトとキバは栓を開け、冷たく冷えたニッキ水をおいしそうに飲んだ。
「お前、飲まねーの?」
ニッキ水の瓶を手にしたまま、じっと見つめている少年に、ナルトが声をかけると、少年は慌てて栓を開け緑色のニッキ水をゴクリと一口飲んだ。
「う・・わ・・・・懐かしい・・・」
「えっ?! 懐かしい?!」
少年がふと漏らした言葉にナルトは少年の顔を覗きこんだ。
少年は慌てたように真顔に戻ると首をぶんぶんと横に振り「なんでもない」と呟いて、再び瓶の口を自分の口に含んで全部飲み干した。
「さて・・ナルト。もう日も暮れるしよ。そろそろ帰るか?なんか今日はすげー疲れたぜ」
「あ・・そうだってば。明日の任務も朝早いし。帰るってばよ!」
瓶を駄菓子屋のおばあちゃんに渡し、お礼を言ってナルトとキバ、少年の三人は再び演習場へと戻った。
ここが丁度キバの家とナルトの家の分岐点なのである。
「じゃ、な」
「おう! キバも明日から又、任務頑張れってばよ!」
ナルトがキバに微笑みかけると、キバは何やら言いたげにナルトを見つめた。
「あの・・よぉ・・」
「ん? 何だってばよ?」
「今日はさ、邪魔が入ったけどよ・・」
邪魔と言う言葉だけに力を入れ、キバがチラリと少年を見た。
少年はむっとした顔でキバを睨み上げる。
「その・・・又・・さ、任務がねえ時に今度こそ二人きりで・・・・うわっ! いてっ!!!」
キバが何か言いかけた時、少年はキバの脛を思い切り蹴り上げた。
「こい・・・つ・・・」
あまりの痛みにキバはその場にうずくまり、涙目になっている。
「おい・・キバ、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
「おっ・・・お前が言うなっ!! 大丈夫じゃねぇ!! イテテテ・・・・」
ナルトの問いかけに、少年が平然と答え、キバが益々怒りを募らす。
ナルトはしゃがんでキバの様子を窺った。
少年もナルトの隣にちょこんと膝を抱えてしゃがみこんだ。
「あ・・歩ける・・か?」
ナルトがキバに問いかけると、ナルトの隣で「歩けるデショ」と少年が答える。
「クソガキめ・・・だからお前が答えてんじゃねーよっ!」
キバはようやく立ち上がると、諦めたようにナルトに「じゃあ又な」と別れを告げた。
「早く帰れ」
「ッ!!!!」
ナルトが答えるより早く、少年がナルトの代わりに答える。
キバは「二度と俺の前に姿見せるんじゃねーぞ!」と少年に吐き捨て、帰って行った。
キバの姿が見えなくなると、ナルトは苦笑しながら、隣に座り込む少年の頭を撫でた。
「お前、どうしてキバの事嫌いなんだ? あいついい奴だってばよ?」
ナルトが尋ねると少年はナルトを見上げニコリと微笑んだ。
その笑みにナルトは又ドキリとさせられる。
「お兄ちゃん・・・」
「ん?何だってばよ?」
ナルトが少年に顔を近づけると、少年は小さな手でナルトの頬を挟んだ。
「オレお兄ちゃん大好き」
「え・・・」
少年は座ったままナルトの顔を引き寄せ、体を伸ばすと唇を重ねた。
「!?」
少年はすぐに唇を離すと立ち上がり、
「じゃーお兄ちゃん、又遊んでね」
と、驚いて固まっているナルトに声をかけ、駆けて行ってしまった。
「な・・・何なんだってばよ??」
ナルトは自分の唇に手を当て、胸の高鳴りが治まるまで立ち上がる事が出来なかった。
「おっちゃん、ミソチャーシューね」
「おう! ミソチャーシュー一丁!」
キバと別れ、少年と別れてから、ナルトは一楽へとやって来た。
頬杖をついて、店の壁に貼られたメニューをぼーっと眺めていると、今日のあの少年の事が思い出され、再び胸がときめくのを感じた。
「ここ、いい?」
聞きなれた声が聞こえ、ナルトはハッと我に返った。
「カカシ先生!?」
「一人? ここ、座っていいの?」
「す・・座れば?」
「あ、そ?」
カカシはニコニコ笑ってナルトの隣に腰掛けた。
「オヤジさん、オレ一楽ラーメンね」
「へい! 一楽ラーメン一丁!」
威勢の良い返事が返ってきてから、カカシはナルトの方へ体を向けた。
「キバくんと遊んで楽しかった?」
「え? あ・・・うん・・」
「なによ? なんか元気無いね?」
「あのさ、カカシ先生!」
「ん?」
ナルトはカカシの方へ顔を向け、ドキリとした。
カカシと視線が絡まった瞬間、あの少年とのキスを思い出したのだ。
やっぱり似ている。
どうしてもあの少年がカカシと重なって見えるのだ。
「せ・・・先生ってさ、か・・・隠し・・・」
「隠し? 何?」
「隠し子って・・・いる?」
「は?!」
ナルトの質問にカカシは声を上げて笑い出した。
「んなに笑う事ねーじゃん!」
ナルトが怒って拳を振り上げると、カカシは必死に笑うのを堪えた。
「ごめんごめん・・・なーに? ナルト、オレに隠し子がいるってどうして思ったの?」
「いや・・・今日・・さ、カカシ先生にそっくりな子供と一緒に遊んだんだってばよ」
「へぇ・・オレにそっくりな?」
「うん・・メンコとか・・めちゃくちゃ強くてさ、ベーゴマだってキバのコマ全部壊しちゃったんだってばよ」
「へぇ・・・」
カカシは楽しそうにナルトの話を聞いている。
「でさ・・でさ・・その子が・・・」
「その子がどうしたの?」
「オレの事、大好きとか言うんだってば・・・」
「ナルトは子供に好かれるのかもね。ああ・・子供からだけじゃないけどサ」
「は?」
「あ、別に・・・こっちの話。で、どうしたの? お前が元気無いのと、その子と何か関係あるの?」
「ん・・・・そのさ・・・あの・・その子が・・その・・・」
「うん、その子が?」
「えと・・あの・・・」
「言いにくいの?」
「ん・・ちょっと・・・」
「どうして?」
「は・・・恥かしいってばよ」
「キスしたってのがそんなに恥かしい事なの?」
「恥かしいだろ? だって俺ってば、キスとかそんな・・・キスとか・・・キスっ!?」
ナルトは目を見開いてカカシを見つめた。
カカシはそ知らぬフリしてカウンターに置かれているメニューを手に取り「ミソチャーシューでも良かったかな・・」などと呟いている。
「かっ・・・カカシ先生?!」
「はい?」
「何でキスって・・・俺がキスしたって・・知ってんだってばよ!!」
「さぁ〜・・・何でかなぁ?」
カカシは楽しそうに腕を組んで考えるフリをする。
ナルトはしばらくカカシの顔を眺めていたが、突然カカシの袖を掴んで叫んだ。
「カカシ先生! あっかんべーして!」
「なに?」
「いいから! あっかんべーって俺にしてみてってば!!」
カカシは首をかしげながら
「べー」
とナルトに舌を出した。
「ねぇ〜ナルト? どうしたの? 何で怒ってるの?」
ナルトは黙ってラーメンを食べ、食べ終わるとすぐに店を出て夜道を真っ直ぐ自分の家に向かって歩き始めた。
カカシは慌ててナルトの後を追いかける。
「ねぇねぇ、ナルト?」
「自分の胸に手ぇ当ててよ〜く考えてみろってばよ!」
「胸に? 手を? ナルト・・・分んないよ」
ナルトはピタリと足を止め、回れ右をして後ろからついて来るカカシを睨みつけた。
自分の胸に両手を当てたカカシの姿がナルトの目に映る。
「嘘ついたって、もうバレバレだってばよ! あの子供ってば、やっぱりカカシ先生だったんじゃん!」
「え? バレてたの?」
なんだ・・と言うように、カカシは両手を胸から下ろした。
「なんで・・んな事・・・」
「だって、ナルトが仲間に入れてくれないから」
「仲間に入れてくれないから・・って、先生子供みたいな事言うなってばよ」
「子供みたいって・・・ナルト、オレの事オヤジだって言ったくせに」
「それはだって・・・」
「オヤジだから駄菓子屋行っちゃいけないんでしょ? ナルトがそんな意地悪言うから。だから子供になって行ったの。子供なら問題無いんでしょ?」
ナルトは大きな溜息を一つ吐いた。
「それは・・もういいってばよ。俺も悪かったってば。俺が怒ってんのは・・・その・・・なんで・・キ・・・キッ・・」
「ああ、キス?」
どうして自分が恥かしくて言いにくい言葉をカカシはこうもサクサク軽く言ってのけるのかと、ナルトは赤面しながらカカシを睨んだ。
「・・・・そう。それ、したりすんだよ!」
「ヤだったの?」
「嫌とか、そう言う問題の前に! あんな風に子供に変化して・・卑怯だってば」
「じゃあ・・・さ」
ナルトの言葉にカカシはニヤリと微笑んだ。
「大人のままだったら・・・卑怯じゃないの?」
「う・・・」
カカシは腰を屈め、ナルトの目線に顔を落とす。
「じゃー・・この姿のままやっちゃうよ?」
「え? えっ?!」
「ホラ、目瞑って?」
「あのっ! カカシ先生っ!?」
真っ赤になって頭から湯気でも出しそうなナルトを見て、カカシはたまらず噴き出した。
「今日はやめとくよ」
その場で硬直してしまったナルトの頭をクシャリと撫でると、カカシはスタスタと歩き出した。
「な・・何だってばよ! びっくりすんじゃん!」
ナルトはドキドキ高鳴る胸に手を当てて、カカシの後ろ姿を追いかけた。
ナルトがようやくカカシに追いつき、隣に並んで歩き始めると、ナルトの目の前にカカシの手が差し出される。
ナルトが遠慮がちにその手を掴むと、カカシは力強く小さな手を握り返した。
「ねぇ・・さっきさ、何であの子がオレだって気付いたの?」
「ニッキ水」
ナルトは一言、カカシに返した。
「・・・ニッキ水?」
カカシが歩みを止めると、ナルトはカカシを見上げて「べー」と舌を出して見せた。
「ん?」
カカシはじっとナルトの顔を見つめ、そしてナルトの赤く染まった舌を見て「なるほど」と苦笑した。
「だからオレにアッカンベーしろって言ったんだ?」
「カカシ先生、緑のニッキ水飲んだだろ。舌が緑になってたってばよ。だから分かったってばよ」
「長いことニッキ水なんて飲んで無いからね。舌に色が着く事、忘れてたよ」
ナルトはようやく微笑んで再び歩き始めたカカシに言った。
「あのさ、あのさ・・今度から駄菓子屋行くとき、カカシ先生も一緒に連れて行ってやるってばよ!」
「え?」
「明日も任務早いんだろ? もう帰らなきゃ」
きょとんとしているカカシにナルトはニシシと笑いかけ、繋がれた手を引き、スタスタ先を歩き出した。
「なに? なんか嬉しそうだね」
「へへ・・・ちょっとね」
「ねぇ・・駄菓子屋行く大人って痛いんでしょ? なのにどうして連れて行く気になったの?」
「ナイショだってばよ!」
「・・・ナイショ? ま、一緒に行けるなら、理由なんてどうでもいいけどね」
二人は繋いだ手を大きく振って暗い夜道をゆっくり歩いた。
ニッキ水を飲んだ時
「懐かしい・・・」
そう言ったカカシの顔が、とっても嬉しそうだった事をナルトは思い出していた。
今度の休みはカカシ先生と二人で駄菓子屋へ行こう!
ナルトがカカシを見上げると、カカシもナルトを見下ろして微笑んだ。
ナルトの瞳に映るカカシの笑った顔が子供のようで・・・
ナルトは何だか嬉しくなって釣られて笑った。
END
■あとがき■
33333番のキリリク「おにはち様」からのリクエストでした。
『キバとナルトが仲が良くて、ヤキモチをやいちゃって、ナルトに甘える仔カカシ先生希望です』
と言うリクエストをいただきました。
私がCPはカカナル以外考えられない人間なのでキバ→ナルトに設定させていただきましたv
ただリクエストいただいたように、甘える仔カカシが書けていません(汗)
キバVS仔カカシになってます(汗)
そして結局普通のカカナルがメイン状態に・・・ごめんなさい(滝汗)
おにはち様、毎度すみません(泣)
苦情はおにはち様に限りお受け致します〜(汗)
リクエストありがとうございました。
もっとちゃんと書けるように、なんとか頑張ります(泣)
'05/06/25
へのへのもへじ
うず 拝
■おにはちコメント■
やりました。33333GETできました! すげー仔カカシ可愛い! ちまかかにも驚きましたがキバの片思いってのも予想外でした! でもキバの片思い凄くいいです。萌え! キバナルちょっと萌えてしまいました。それにもまして、仔カカシが凄く可愛い。こんな可愛い子が「遊んで」と来たらそりゃ遊びます。そして、ナルトいい子だなあ! 邪険にせず面倒見ちゃうんだもの!(私事の思い出ですが、ちょっと妹が引っ付いてきて、うざいからっておいてっちゃった苦い記憶とか思い出したりしました)。この小説を一言で語るなら「萌え!」。やばいです。おにはちはもう、萌え死にました。本懐遂げました。
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