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ナルコ*うつむく彼女

 女の子が三人よれば恋の話にも花が咲くものだ。
 たいていは。
 よっぽどの事情がない限り、例えば趣味が偏ってるとか特殊とかそんな事がない限り大抵は恋の話になるものだ。話し初めが例えバーゲンの話でもだ。
続き
 ナルトはこの手の話が大の苦手で問いかけられても「あー」とか「うー」とかサイレンのように音を繰り返してる。声ではない、繰り返される音だ。
 一度適当にサスケの名前を出したら、イノとサクラの意中の人で、しかも二人より近い位置にいたので大変困った状況になってしまった。
 今では適当にサイの名前を出している。サイもそこいらへんは分かっているらしくからかわれたりすると「しょうがないですね」とばかりに流し目をくれて軽く溜息をついて話をあわせてくれるのだった。
 だったらついでに付き合ってしまってもいいだろうと思うのだが、お互い「こいつとだけはゴメンこうむりたい」と思ってるが、友達としてはいい奴なので、お互い相談したりされたりといい関係を築いていた。
「まあ、あれですよ。どうしても嫁の貰い手がなかったら、僕が貰ってあげますから」
 今日もにっこりと笑ってそんな事を言われるのでカチンとして言い返そうとしたがにらむだけに留まった。
「別に好きな人がいないわけでは……」
 最後の方はナルトの口の中にぼそぼそと消えていく。
「だって、告白できないチキン野郎に彼氏なんて一生できるわけないじゃないですか」
 サイは言いながらげらげら笑う。ゲラゲラ笑いも棒読みの様な笑いなので尚更ナルトの癪に障る。
「野郎じゃねえってばよ!」
「それは失礼」
 心から謝ってないのがバレバレの言葉にもういいよと肩を落とす。そんな姿を見ながらサイはふっと微笑むと左手の人差し指を自分の唇に当てた。
「当ててあげましょうか?」
「は?」
「ナルトの好きな人」
「ほほー」
 当たるもんか。
 ニヤリと笑うとナルトはサイに当ててみろとばかりに唇をゆがめた。
「当てたら何かくれる?」
「何が欲しいんだってばよ?」
 ナルトも自信満々だが、サイも自信があるらしい。
「そうですねえ。じゃあ、その人に告白してもらいましょうか」
「な!」
 ナルトの顔が一気に赤くなった。当てられてもないのにかなり動揺している。
「いいでしょ? 別に。好きな人に好きって告白するだけですし」
「お前! 分かってねぇ!」
「どうしてです? だって告白すれば好きか嫌いかはっきり分かるじゃないですか」
「ハッキリされるのが怖いんだって!」
「とんだチキンですね」
「だって、相手に!」
 そこで言葉を留めてナルトは左右に視線を走らせた。
「拒否されたら、俺、もう、どうやって顔あわせたらいいのか」
「別に今まで通りでいいんじゃないんですか?」
 分かってないなあとナルトは苦笑して首を振るがサイにはその心情が良く分からない。別に告白するだけだ。言葉一つで何も変るわけないだろうと言うのがサイの考えだ。
「お前はどうなんだよ。好きな人に振られたら平気で会えるのかよ」
「会えると思いますよ。だって、しょうがないじゃないですか。ボクを好きではなかったわけだし」
 わかっちゃいないなあとナルトは首を振る。
「俺は耐えられない。無視されたらもうその場にいれない。拒否されたら、きっと」
 そこで言葉を留めて力なく笑う。
「まあ、ふられたらボクが慰めてあげるから玉砕してくれば?」
「ちょっとまて、ふられるの前提で話してないか?!」
「そのつもりだけど?」
「大体、当ててもないのに何でこんな話になってるんだよ」
「いいの? 本当に当てちゃうよ?」
 腕組みしてサイをにらみつける。
「カカシさんでしょ?」
 一度治まったナルトの顔の赤さが復活する。ナルトは困ったように視線をさ迷わせるとうつむいた。
「バカ。何で当てちまうんだよ」
 泣きそうな顔で地面を睨み付けている。
「そりゃあ、友達、えっと悪友? ですからね」
 にっこりと笑って答えれば真っ赤な顔のナルトが上目遣いに見上げてくる。
 トクリ。
 サイは痛みを伴う心音が耳の横でなるのを感じた。
「バカ……」
 何度目の罵倒の言葉だろうか。
「君ほどじゃありませんよ」
 痛みを感じる鼓動に思わず優しい笑みが生まれてきてしまう。
 当たったから告白に行って来いというはずの言葉がサイの口の中で泊まった。うつむくナルトの頭をサイは言うべき言葉をかみ締めて見つめていた。

おわり