ナルトが何処の誰かは知らないのはこの世界の常識だ。
どんなに親しくなってもリアルで会ったと言う奴はまったくいないのでNPCじゃないかとか、キャラは女でも攻撃の仕方は男っぽいのでひょっとしてネカマじゃないかと言われたり。
でも、プレイヤーにはどうでもいいのだ。
楽しく会話出来て仲良く狩にいったり、自分を攻撃しなければ。
MMOの中で、本当の名前なんてどうでもいいのだ。
大体、リアルで会った友人の半数以上本名を知らないじゃないか。
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タイトルは「電脳アリスMMO(仮)」(うわ、頭悪いタイトル)。ですよー。サスケが「アリス」なのですが。
MMOとタイトル付けたので、MMOの話です。ルールはUO(AOS以前)、世界的には大好きな「マイクロチップの魔術師」を参考にしました。ヘッドセットは「アイドル」に出てくるやつっぽい感じに。
趣 味 丸 出 し の 小 説 で す よ 。
印刷所を予約するのを忘れたと言う致命的なミスを犯したので、コピー本ですよorz
もう、不親切なくらい説明をカットしていったらこれ大丈夫なんでしょうか? と自分が不安になりました。
ついで、息抜きに描いたアサト。時間が無いのでそのまま色塗ったらいい感じに仕上がったので満足ですよー。
↓内容はもうちょっと変わっちゃうと思うんですが。
ぱちんと切った画面は鏡のように自分の顔を映している。
大人になり切れてない不安そうな顔が映って眼鏡をはずしながらナルトは目を逸らした。
窓に当たる雨音に気が付き空模様を見ようと、近寄って見上げるが真っ暗で雨脚がどんな具合か分からない。
「腹減った……」
呟いて玄関に向かうと傘立てから傘を取り出し、夜に開いた。目にも鮮やかなオレンジがパッと闇に咲く。
雨の日は足が重くなるのか人通りが少ない。道は濡れて黒々と街灯に照らす。
一楽に行こうかコンビニに行こうか迷いながらナルトは歩き、足を公園の方に向けた。少し遠回りして歩きたかったのだ。色々考えたかったのだ。
ネットの中ではナルトは少女だった。屈託無く笑って仲間と馬鹿をやったりしている。
昔と違ってマウスで操作するのではなく、脳波に直接信号を送り電脳世界、仮想現実世界(フィールド)に自分自身のキャラクターを作る。
少しファンタジーの入った世界は「ごっこ」遊びをするには最適の場所だった。「十五秒の死の世界」を体験するのは辛かったがモンスターを仲間で協力して狩るのは楽しかった。「十五秒の死の世界」は何にも出来なくなってしまうのだ。呼吸も身体も何もかも動かなくなってしまう。気持ち悪い感覚だ。初めての人はそれでパニックになってしまう人もいるが、その場合は自動的に現実に送還される。だから仮想世界が用意したヤングクエストでも一番初めに体感するのは「十五秒の死の世界」だ。ヤングクエストをこなさない場合、友達に誘われて仮想現実に来た者はまず最初に友人たちに「死の洗礼」を受ける。儀式の一つで、行う場合は「死の洗礼」の儀式を宣言すれば「殺人カウント」は付かない。大抵は「誘った友人」がその役をする。仮想現実でも人殺しは罪で殺した場合は「殺人カウント」が付いて犯罪者になる。それがかっこいいと殺人者になる者もいる。昔から言うPK(プレイヤーキラー)と言う奴だ。しかし、仮想現実を作った会社は何もしない。。だから対抗して殺人者を狩るPKK(プレイヤーキラーキラー)もいるわけで、彼らはギルドに所属して殺人者を狩って報奨金を貰ってる。いわば賞金稼ぎだ。
会社が介入するのは「アリス」と呼ばれる電脳家出をした者がいる時だ。
リアルワールドに嫌気が差してしまった者たちが、電脳世界に逃げ込んでしまうのだ。「アリス」になったものはずっと眠ったまま。呼吸も何もかも普通なのに心が無いからずっと眠ったまま。自室でPCとか点滴とかカテーテルとか色々な管を付けられてずっと眠っている。今では「アリス」を防ぐためにPCに自動的に「帰還システム」というのが付いているが、規格外の不法なPCも出回っている。
それでも、このシステムが禁止にならないのにはデメリットをを上回るメリットがあるからだ。障害者やアリスとは逆に身体は眠ってしまっても脳が動いてる人が自由に生きていける世界だからだ。そのための職業もある。一企業が開発したシステムが今では世界規模になろうとしている。そのためのルールも作られている。国によってルールは違うようだが。
サスケも「アリス」になってしまった一人だ。ナルトに「死の洗礼」をしてくれた奴だ。
少女の姿で現れたナルトにサスケは大笑いした。
ナルトは公園にある池の暗い水面を見ながらぼんやり歩いていた。遠くの街灯が水面を照らしている。
「不思議の国のアリス」から取った「アリス」。「アリス」はやがて夢から目覚める。ただ、少しの間だけ不思議の世界に迷い込んでしまったのだ。戻って来たものもいる。無理やり戻らされた者が半数以上だが。
雨脚が弱まっていく音を聞きながら、ナルトはサスケが白兎で自分がアリスみたいだと時々思う。
サスケが「アリス」になってからナルトは探していた。
ちっとも見つからない。
ため息も出ないくらい絶望して現実に帰って気分が重くなる。どのサーバーにもサスケはいなかった。後は個人で立ち上げた不法サーバーくらいだが、ナルトの腕前では「介入」できるかどうか。そこそこのシステムには介入出来るがトラッキングされたり、切られたりしてしまっては自分がダメージを受ける。
フィールドで知り合ったサクラやサイはナルトよりは優秀な「介入者」だが、「介入」メインなのでシステムには入れるが、長時間の「介入」はまず無理だという。「介入」と「書き換え」と「破壊」も備えた「技能者」がいればいいのだが、生憎とそんな知り合いはいない。
いや、先ごろ顔を出すようになった「カカシ先生」なら出来るかもしれないが、あまり知らないのでどこまで「ばらして」もいいものだか分からない。
まだ「本名」を知らない同士なのだから。
個人情報が含まれてる「本名」は絶対に明かしてはならない。リアルでごく親しい者同士ならいいが、悪用される恐れもあるからだ。
サクラとサイもネットでは親しいが本名を知らない。本当は男か女かそれすら分からない。
色々考え込んで足が止まっていたのに気が付いて、再び歩き出した。傘に当たる雨音もいつの間にか聞こえなくなっていて、傘を閉じる。
「カカシ先生」は見た目怪しい男だった。銀髪に顔の半分以上も覆ったマスク姿。現実にいたらまず間違いなく職務質問される出で立ちである。フィールドで仕事を持ってるのでひょっとしたら障害者かもしれないが、何であんな容姿にしたのか。ナルトが会った障害者は普通の人より普通の格好をしていた。
「管理者」かとも思ったが、それぞれの五つのサーバーに一人ずつなので、ナルトのいる「火」のサーバーには「ツナデ」という女性の管理者がいるのでまずありえない。「管理者」はサーバーの大臣みたいなものだ。個人サーバーにもそれぞれ「管理者」がいたが、カカシ先生でない事は確かだ。
PCや仮想現実に詳しいので先生と呼んでいるが、ひょっとしたら関係者なのかもしれない。
一楽に行こう。
思いを断ち切ってナルトは元気良く一楽の方に足を向けた。色々悩んでいても仕方がない。ナルトがしたい事は一つ「アリス」になったサスケを探す事だ。