ナルトの肩口に擦り寄るカカシをイルカは口を開けてぼうっと見ていた。
「なに見てんだ?」
 アスマが捲っていた雑誌から目を上げてイルカに聞く。イルカはそのまま、答える。
「…いや、久しぶりに、愛見ちゃったなあって」
「なんだそれ」
 訳が判らないとアスマが笑う。イルカはそれでも二人を見ている。
 別に何時もの風景だった。
 カカシがいてナルトがいてイルカがいてアスマがいて、サスケとサクラがいる。アスマとイルカが一緒につるんで、サクラとサスケが何かしてる、カカシとナルトは静かに寄ってる。普通の風景なのだ。
「あーでもわかる。判るぜ俺」
 アスマが納得したように首を振りながら云うので、本当に判ってるのかとイルカは振り向いた。
「あれだろ? カカシとナルトだろ? 判る。なんか、あの二人がいると、他の奴寄るなって、雰囲気だしてるからな」
「…わかってますね」
 イルカはそうそうと頷く。再び振り返ると、なにやら静かに談笑している。幸せそうで入り込めなくて、アスマとイルカはじっと二人を見ていた。
「あれだ」
 アスマがテーブルに伸びる。
「ん?」
「俺達みたいに手垢が付いてる愛じゃないんだよ。あの二人は」
「俺とアスマさん?」
 イルカが嫌そうにアスマを見ると、その顔がツボに入ったらしく、アスマが笑い出す。ここまで笑われるといい加減むかついてふてくされてイルカは顔を背けた。
「あれ、だよ。多分本人達も愛だなんて気がついてないんじゃねえか?」
 笑いすぎて出てしまった涙を拭いてアスマが起き上がる。
「愛…恥ずかしいことばだなー」
 何、照れてんの、とアスマから突っ込みが入ってイルカは照れて笑った。
 そのまぼんやり二人を見ている。ナルトがずるずると体ごと滑り落ち、今ではなんだかカカシに膝枕されてる形になる。カカシはにこにことナルトを覗き込んでいた。手を伸ばしたナルトの左手に見慣れないブレスレットが光っているのを見てイルカは首を傾げた。気のせいでなければ、この間カカシに付き合った買い物でイルカが色々相談にのって、求めたものではないのか。自分用ではなかったらしい。
 カカシが頭からタオルをかぶった。なんだろうと思って見ているとそのまま体をまげる。
 タオルで見えないが、キスしてるのは明白だ。
「!」
 体を起こすとナルトがタオルを引っ張る。カカシは何か文句を言って、しょうがないなと微笑んで、それからゆっくりと何か呟く。ナルトは、ちょっとカカシを見上げてから、
 笑った。
「ああ」
「なに?」
 アスマが雑誌から顔を上げた。
「今日さ、ナルトの誕生日なんだ」
「あ、そうか」
 アスマはがさがさと自分の鞄の中をかき回していた。プレゼントを探してるのかプレゼントになりそうなものをさがしているのか。
 イルカはじゃれる二人を見ながら小さく呟いた。
「青春だねえ」
 ナルトの手がカカシの髪の先を弄んでいた。
           おわり

この小説は五年前の別ジャンルの小説をリメイクしたものです。

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