■綻び
 雨足は急速に強まり、ナルトはがっくりと項垂れた。雨の中の任務もやった事はあるが、それは紙の荷物がないからで、今はランドセルに教科書もノートも宿題のプリントも入っている。
 濡れてもいいのだが、後の処理を考えるとうんざりしてしまう。もう少し雨足が弱まってから走って帰ろうとため息を付きながら空を見上げが、一向に止む気配は無い。
 学友達は親が迎えに来てカラフルな傘を咲かせて帰っていく。生憎とナルトと親しい友人達は雨が降る前に帰ってしまった。一人だけ別の班のナルトは掃除のせいでおいてけぼりだ。
―エロ仙人に期待なんかしてねーってばよ。
 でも、迎えに来てくれないかななどと考えてみる。自来也が傘を掲げて迎えに来るところを想像したが、想像した分むなしくなってしまった。
 無理だろう。自来也は自来也で自分の仕事がある。忍者なので迎えにくるなどとは思い浮かばないだろう。
「ナルトくん。家一緒の方向だよね?」
 隣で傘を広げながら尋ねて来る者がいるので、そちらの方に顔を向けると、たなかカカシがいた。
―お、入れていってもらえるのかな?
 ラッキーなどと思いながら頷く。
「よかったら入ってく? 俺の家近いから、そこから先は傘かしてあげるよ」
 その申し出にナルトは何度も頷いた。渡りに船とはこの事だ。たなかカカシの開いた傘の下に入る。
 ナルトが話せないのでたなかカカシが一方的に話してナルトが頷くという感じだった。たなかカカシは御伽噺が好きなようで色々な国の話をナルトに聞かせる。
「ここ、俺の家だよ」
 安アパートを想像していたナルトはちゃんとした一軒家を指差されて驚いた。しかもナルトが毎日通るたびにでかい家だなあと思っていた家だった。口をぽかんと開けて見とれている。
「両親の遺産なんだ」
 慌ててナルトは頬に手をあてた。そんなに聞きたそうな顔をしていたのだろうか。ちらりとたなかカカシを見ると判ってるよとばかりに頷き、「初めての人は良く聞くから」と大笑いし、たなかカカシが門をあける。少し荒れた感じがする庭だった。仕事があるから仕方がないのだろうが。
 庭師でも雇えばいいのにと門の内側の伸び放題の薔薇に触れる。育つだけでは美しくないという見本のように薔薇は伸び放題だった。
「よかったらお茶でも飲んでいく? お菓子もあるよ」
 お菓子!
 キラキラとナルトの目が輝く。元より甘いものに目が無いナルトだ。しかも担任の先生と安心できる人の家だ。危険な事はないだろうとナルトは何度も頷いた。
「どうぞ?」
 たなかカカシが大きく門を開いてナルトを招き入れる。ナルトはお邪魔しますとたなかカカシに向かって笑顔を見せた。

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