■切欠
ゲンマは一つの事件に目を留めた。保安部の資料室で資料をあさっていた時の事だ。
その事件は木の葉でも話題になって、間者がはいってるんじゃないかとか冗談の様に言われていた事件でゲンマも同僚の噂話や事件の資料を見て推理をしたものだ。保安部の資料は新聞や週刊誌よりも当然詳しく書かれていて、被害者名もしっかり出ていた。
たまたま、その被害者の一人が事件を起こしていたからだ。事件といっても酔っ払いの喧嘩だが、備考欄に二年前の飲食店の爆破事件がかかれてあったのだ。
好奇心がむくむくと起こった。
ひょっとしたら自分が知らない事ものっていて、その知らない事を知れば自分が解決出切るのではないのかと。ゲンマの脳裏に解決して褒め称えられてる自分の姿が思い浮かんだ。が、慌てて何馬鹿な事を考えてるんだと頭を振る。
忘れるように、殺人事件の資料に目を戻すが、やはり気になる事は気になるもので、時には休息も必要などといいわけをかまして、その事件の資料をひっぱりだした。
普通の新聞記者なら保安部は目くじらをたてて怒るところだが、木の葉の里から使わされた忍者だとわかっていて管理者もちらりとゲンマを見るだけで何も言わない。
お目当ての資料を開く。発生日と概要がかかれその下に死亡者と被害者名がかかれてる。新聞にも出てなかった事なのでゲンマは少し感動した。何人かは顔に酷い怪我をしたようだ。カルテのコピーもつけられていて、何人かは整形していた。
ぴたりと目が止まる。
―あ、たなかカカシね。カカシ上忍の事かと思った。
ふっとその部下のナルトの顔を思い出して、帰ったら話してあげようと微笑んだのだが、そんな事件の被害者の事を聞いても嬉しくはないだろうなと思いなおした。
が、やはり気になる。
ゲンマは自分の好奇心を満たす為に被害者のページを開いていった。
顔写真と勤務先、住所、電話番号が書かれている。中には新しく住所が変わったらしく、最近の日付で書き込まれているのもあった。
ページを開いた瞬間、ゲンマはぎくりとして手を止めた。
―カカシ上忍!
他の被害者は一枚だけなのに対してたなかカカシは二枚はられていた。
整形してもらうなら、前の顔より良くしてもらってしまうだろう。保険も降りるし、ひょっとしたら飲食店の関係者とかから多額の見舞金ももらってるかもしれない。
「あっ!」
勤務先を見てゲンマは驚いた。ナルトの通ってる小学校なのだ。
こんなにそっくりならナルトが嬉々として話してきそうなものだが。そこまで考えてゲンマはナルトが話せない事を思い出した。ついでに授業参観の事も。きっと授業参観で驚かそうとしていたのだろう。住所を見て以外と近所なのに驚く。頭の中の地図で照らし合わせて大きな屋敷かと思い当たった。
―あの大きな家か。
自分の好奇心を満たしてゲンマは資料を閉じる。
再び殺人事件の犠牲者の子供を調べ始める。
誘拐犯は被害者に安心感を持たせるために初めは甘い顔をしているものが多い。けが人の振りをしたり、おどおどと道を聞いたり、警察官だと言って相手を安心させたり。
警察官だと言って相手を安心させたり。
ゲンマははっとなった。
いや、しかしまさか。
一番最初の犠牲者の子供の資料を見る。
一番最初の犠牲者の子は、ナルトの通ってる小学校の子だった。その次の子は隣町。地図のコピーに目を走らせる。円形状に広がってる。そこに犠牲者達の住所を三角印で書き込んでいくと丁度クロスする地点がたなかカカシの家だった。ゲンマはペンを落とした。
唇が震えた。
―食いついていたんだ!
「電話! 電話かしてくれ!」
自来也さま!
呼び出し音を聞きながらゲンマは焦っていた。三回目で自来也が出ると、ゲンマは即座に「ナルトは?!」と聞いた。
『雨宿りしてるかもしれんの。まだ帰っておらん』
ゲンマははっと気がついて、その子が失踪した日の天気を確認する。三人くらい確証すると慌てて自来也に用件を伝える。
「暗部にナルトを保護してもらってください!」
開口一番そういうと、自来也は少しまてといい、しばらくして無線で暗部に連絡を取ったとゲンマに伝える。
「すいません、まだ俺の感なんですが、この子達、全員雨の日に失踪してるんです。つまりそれって、誰かが傘を差し出して送っていくとか言ってたんじゃないでしょうか? 身分を明らかにすれば相手の子も安心するんじゃないでしょうか? つまり、小学校の教員だと言えば子供は安心して傘に入るんじゃないでしょうか?」
自来也は電話の向こうで息をのんだ。
『ふむ。常套手段だの』
「今、犠牲者の住所を地図に書き込んでみたんです。何人かは失踪した場所が不明でしたが、失踪した場所と犠牲者の住所を繋ぐと一箇所クロスするポイントがあったんです」
『まどろっこしいの! 先に結果を言え!』
「その住所は、ナルトの担任の家でした。近所に大きな屋敷があるでしょう? あの家です!」
『! 暗部を向かわせたが…保安部に話して道路を押さえてもらえ。それだけでいい。あとは戻って来い。一足先にわしはその屋敷に向かってる』
返事をする前に電話は切られた。逃走の恐れがあるというという事か。その場にいた者に伝言をのこし、ゲンマは雨の中に飛び出した。