■人形
 高い天井をナルトは口を開けて見ていた。あまりお目にかかったことがなかったからだ。洋風のリビングはごてごてと飾られておらず、割とシンプルだった。テレビと本棚があるくらいで他の飾り物は見当たらない。飾られているといえば四代目の写真がポスターのように飾られているだけだ。
 ああとナルトは思う。火影室に似ている。大きな机や歴代の火影の写真は無いが。
「和菓子、好き?」
 練りきり餡の和菓子が漆塗りの皿に乗せられて出される。てっきり、クッキーかケーキが出てくるのかと思っていたので、可愛らしい綺麗なお菓子が出された時、ナルトは思わず緊張してしまった。
 急須にお茶葉を入れてお湯を注ぐ一連の動作をまじまじと見てしまう。
「亡くなった母親がね。お茶の先生やっていて、時々昔ひいきにしてたお菓子屋さんが届けてくれるんだ」
 お茶を出される。ナルトは何時食べていいものかどうかじりじりしていた。目の前においしいお菓子があるのに、緊張して手が出せない。
「どうぞ?」
 そう言われてナルトは手を合わせると、手づかみで口に運んだ。一口噛み付いて皿に置いてある小さなフォークに気がついて汗が出る。
 たなかカカシはニコニコ笑ってナルトが食べるのを見ていた。
「いっぱいあるからね」
 そういって台所に引っ込んでしまう。そういえば和菓子って楊枝がついていたっけ? と口を動かしながら三代目火影の家で出された菓子を思い出す。あの時は三代目火影も手づかみで食べていたので気にもしなかったが、こんな目立つフォークがあるという事は、たなかカカシはナルトにこれを使ってほしかったのだろう。それともただ単に無かっただけなのか。
 台所からたなかカカシが菓子箱を持ってきて蓋を開ける。季節の花をかたどった綺麗なお菓子が区切られて並んでいる。一箇所だけ空いてるのは、今、ナルトが口にほおりこんでいる分だろう。
「でもナルトくんって、本当に、似てるよね」
「?」
 問いかけるように首をかしげる。
 くらりと眩暈がした。そのま視界がかすんでくる。
 たなかカカシが優しく微笑んでいた。

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