■任務
「俺? 俺がやんの?」
 自来也が今回の仕事の話を持っていくとナルトは顔を輝かせた。思い上がらせてはだめだと、自来也がサスケを引き合いに出して釘を刺すと絵に描いたようにしょぼくれる。あまりにも子供らしい態度に自来也は微笑を浮かべた。こんなに感情を素直に出す忍者は、そういないだろう。
「まあ、危ない仕事ではないからの。お前は奴をおびき出すだけでいい」
「やつって?」
「犯人にきまっとろうが」
 先ほどのしょぼくれはどこへやら、強い瞳で自来也を見返した。
「いいか、絶対戦おうとするな。相手の腕はかなり上ということがわかっておる」
「ええー」
 ナルトは不満そうに顔をゆがめる。よくもまあ、こんなに顔を崩せるもんだと、自来也は感心した。
「己の力量を分かるのも立派な忍びの心得」
「わかったってばよ。俺がそいつをおびき出してエロ仙人達に引き渡せばいいんだってば?」
「そうだ。ものわかりがいいのう」
 そういって頭を撫でるとナルトはくすぐったそうに笑う。本当に素直な子供だのう。自来也の目じりが下がる。危険な目に巻き込みたくは無いと思うのだが、これから先こんな任務はザラになってしまうのだろうと思い、自来也は決断した。
「事件のあらましとしては、木の葉の里のすぐ東に歓楽街があるんだがの。そこで金髪碧眼の子供が拉致されて数週間後には死体となって発見されるわけだ。死体には身体の何処か一部が切り取られていての。あまりにも鮮やかな手口に上忍か医療忍者かではないかと言われておる」
 皮がはがれている者、内臓が切り取られているもの。よっぽど金髪碧眼の少年に憎しみを持ってるとしか思えない仕打ちだ。解剖の結果、性的暴行はされてないらしいことが判明して尚更謎が深まった。たいていの場合子供の拉致監禁とくれば、売られるか、性的暴行のどちらかなのだ。
「俺、絶対そいつ、おびき出すってばよ。おびき出すから絶対捕まえてくれよ。エロ仙人!」
 ぐっと拳を握り締めてナルトは自来也を見つめる。殺された子供達に同情したのだろう。
「わかっとるわ」
 親指をナルトに突き出すとナルトも親指を突き返して笑う。
「これを着てもらおうか」
 ぽいと風呂敷をナルトにほおり投げるとナルトは上手に受け取る。
「なんだってば?」
 風呂敷を広げると子供服が出てきた。
「子供服?」
「四代目の服だ。今回は忍者の格好をしてると食いついてこないからの」
「四代目の?」
「お前と同じ任務の時に着ていた服だ。ちょうどお前くらいの歳だの」
 ナルトはふうんと返事をして着替えだした。こころもち嬉しそうである。憧れの火影だからだろう。もっと喜ぶのかと思っていたがあまりにも素っ気無い態度で少し自来也は寂しかった。が、ナルトの顔を見て素っ気無くも無いのかと自来也は笑う。愛おしそうにナルトは服を着るとじっと見ていた。嬉しすぎて胸が詰まってしまったのか、四代目火影にもこんな時代があったのかと思っているのかのどちらかだろう。服は少し大きめだが大きすぎると言う事はなさそうだ。
「少し大きいってば」
 振り向いた瞬間、過去が重なって自来也の胸が締め付けられた。
 何と似ているのだろう。
 慌てて思いを振り切り、ナルトに向かって顔をしかめる。
「チビじゃの」
 つんとつむじをつつけばスイッチが入ったようにナルトが怒り出す。
「成長途中だってばよ!」
 なれないスニーカーと靴下の具合をしきりと確かめて自来也に向き直る。ニシシと笑うとくるりと回った。
「四代目の服!」
「……やっぱ似てないの」
 ナルトはナルトなのだなあと自来也はしみじみ思う。
「あたりまえだってば! 俺と四代目は別な人だってば!」
 何言ってんだとばかりに笑われて自来也はゆるくため息をついた。ナルトの言うとおりで、自分はナルトの中に何故、四代目の影を見つけようとしていたのか馬鹿らしくなったのだ。それでも似ている所を探そうとしている自分に自来也は苦笑した。
「特別上忍一人と暗部二人が今回のチーム編成だ。ランクはA」
「A!」
 ナルトの顔つきが変わった。ランクに喜んではしゃぐのかと予想していた自来也は少し意外にナルトを見る。いっぱしの忍者の顔つきをしている。ランクの大きさへの喜び、任せられる誇り、そして少しばかりの恐怖。自分の若いときを思い出して自来也は微笑む。
「特別上忍一人とわしとお前は変装してしばらく生活する。暗部二人は飛び回ってもらう事になるがの」
「特別上忍?」
「確か不知火ゲンマとか言う奴じゃ。暗部二人の名前はしらん。火影がつけただけだからの。まあ、親子三代ということで街に住む。わしがじいさんで、ゲンマがお前の父。お前はその子」
「遺伝的に無理があるってばよ」
 ナルトはゲンマの容姿を思い出して答える。一度ちらりと見かけたのだが、髪はバンダナに包まれていたので、色は覚えてない。。
「まあ、大丈夫じゃ。もっともわしとゲンマは目に青いコンタクトをいれるがの。母親が金髪でわしも若い頃金髪だったとすればそうおかしくもないだろの。ゲンマは婿養子ということで」
 つじつまを合わせたような設定に納得したような納得できないような感じではなったがナルトはこの任務を引き受けた。
「お、そうそう、忘れておったわい」
 自来也はすばやく印を切ると手のひらをナルトの喉に押し当てた。突然の事に抗議の声を上げようとしたナルトの声が出ない。どんなに大声を上げようとしても出ないので自来也が封印したのだと気づき睨みつける。
「お前は少々騒がしいからな。犯人の標的は大人しい子供での。まあ、封印自体、単純なものだから、封印したチャクラより大目のチャクラをこめればお前でも外せるぞ。修行にもなって一石二鳥だ」
 がはは! 豪快に笑う。ナルトは色々試したのだがその場所に集中できず結局出発しても封印は解けなかった。

<<前  次>>

小説インデックス ホーム