■忍ぶ
安らかな寝息をたててうずまきナルトが眠っているのを見るとクナイを握り締めた。
ベッドの傍らに立つと冷たい瞳でナルトを見下ろし、ゆっくりとクナイをふりあげる。
「ふっ!」
真っ直ぐ女はクナイを振り下ろした。
ざっくりとした手ごたえ。多分即死だろう。
女は死体を持ち去るべくシーツを捲る。その瞬間にボンという音と煙と共に枕にナルトの身体は変わっていた。
「変わり身!」
「はい。そこまで」
ぱちりと電気がついて、ナルトを抱えたカカシが入り口に立っている。
女、元副担任はまぶしそうに瞬きをした。
「な、んで」
「良く考えれば判る事だったんだよね。でもさ、たなかカカシの大きなおまけが邪魔をして、見えなくなっちゃってたんだよね」
自来也とゲンマが女を取り押さえる。
「まあ、一応は感謝してるかな。おまえが起こしてくれた騒ぎでナルトの場所が判ったんだから」
「……」
「ナルトが自来也さまにいったんだってね。おまえは片手で蜀台を持っていた。大人の男でも両手で持ってよろける蜀台を片手で持っていたんだ。しかもそれでたなかカカシを気絶させるくらい強く殴ったんだよね」
副担任は悔しそうに唇を噛んだ。
「普通の女じゃ出来ないよね。くノ一さん」
舌をかまれないように自来也はすかさず、開いた女の口に布をつめる。
「最初からナルト狙いだったんだ。随分長い計画だね。二年前から狙っていたの? たなかカカシに俺そっくりに整形させてさ。罪を擦り付けて」
何が判るのよ。
女の瞳がそういって睨みつける。その瞳にカカシは寂しそうに微笑んだ。
寂しく笑いながらカカシは腕の中で眠るナルトをだきしめなおした。
「大方、九尾に肉親でも殺されたんだろう。でも俺だって今はこの子が大事。あの人の子供だからじゃない。ナルトだから。この子を殺そうとするなら」
ナルトは薬でも飲まされたのかこれだけの騒ぎにも起きる気配を見せなかった。
「俺がお前を、消す」