■おやすみ
 ナルトが目覚めるとカカシの顔が見えて微笑んだ。ナルトが意識を取り戻したのに気がついてカカシは慌てて両手で顔を隠す。
「どうしたんだってば?」
「や、だって、俺の顔見たくないでしょ? 名前も」
 隠しながら指の間からナルトを見る。
 その仕草がおかしくてナルトは声を上げて笑った。
「ちょっと、笑うことはないでしょう?」
 怖がってない事に気がついてカカシは手を外すと唇を尖らせてナルトを見ている。
「俺の事怖くない?」
「なんで?」
「だって、ナルトを襲ったたなかカカシと俺そっくりだろ?」
「? そっくりじゃねえってばよ?」
 ナルトの言葉にカカシが不思議そうに眉をよせる。
「え? だって、凄いそっくりだったよ? 俺死体見たけど。そっくりすぎて驚いたよ」
「全然違うってば」
「何? それって愛のせい?」
 と、まじめな顔で聞くとナルトはげらげら笑い出した。
「だって、先生! 先生は顔半分隠してるじゃん!」
 当たり前の答えにあっけに取られたと同時におかしくなってナルトと一緒に大笑いした。そうなのだ。自分は毎朝カガミでみてるからそっくりだと驚いたが普通は隠れているのだ。
「んーそれに、やっぱり似てないってば。先生は先生だけど、たなかカカシ先生は先生の真似をしていただけ。真似してかっこよくなろうとしてただけ、全然別人」
 あんな男を先生と呼ぶのかと、カカシはナルトは優しいなとくしゃくしゃと頭を撫でた。
「おつかれさま。ナルト。よくやったね」
「……先生、優しくてきもちわりい」
 その言葉にかちんとくる。思い切り頬を左右にひっぱってやった。
「闇ってさ」
 急にまじめな顔でナルトが呟く。
「甘いの。女の人みたいに。しかも、何でも許してくれるの。そーいうのが手を伸ばしてくるの」
 言いながらナルトはカカシに手を伸ばした。まるでナルト自体が闇であるかのように。
「だから皆、手をとってしまうんだってば。でも俺はソレが悪いとはおもわねえ。生きてれば誰だって闇の手をとると思う。でもさ、闇は真っ暗で、何も見えないんだってば。自分が今何をしてるか、どんな格好してるのかって光が無いと全然見えないんだってば」
 ぱたんと腕を下ろしてナルトは外を見る。カカシは静かにナルトの言葉を聞いていた。ナルトの言葉を借りればカカシだって闇の手を掴んだ事がある。確かに何をしても許してくれて甘くて優しかった。抜け出したくないとも思ったが、差し込んだ光にあまりにも自分のすさんだ姿が恥ずかしくなり闇から抜け出したのだ。ナルトもその事で苦しんでいた時期があるんだろうな思うと胸が痛くなる。
「さて、そろそろ任務いかないとね。サクラとサスケに怒られちゃうよ」
「あ、まーた遅刻だってばよ」
 返事の変わりにナルトの鼻をぎゅっとつまむ。
 入り口で立ち止まり微笑んでナルトを振り返った。
「おやすみ」
「まだ昼間だってばよ!」
 ナルトがげらげらと笑う。それでもにっこり笑うと「おやすみなさいってばよ!」と返事を返す。
 カカシは笑うと病室を出て行った。

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